イザベル・ファウスト

2016/1/17

松本市音楽文化ホール ザ・ハーモニーホールにて、イザベル・ファウストの無伴奏バッハを聴いてきました。

プログラムは

J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンの為の
  パルティータ第3番
  ソナタ第1番
  パルティータ第2番

アンコールも
  ソナタ第3番よりラルゴ

イザベル・ファウストは第一線で活動する演奏家の中で、最も評価の高い1人です。
楽器はスリーピング・ビューティーと名のつくストラディバリウス、弓は公表されていませんが遠目にはモダン弓、バロックの持ち方でした。

2012年の改装オープン以来、音響に不満を感じていた音文ホールでしたので、初めは聞こえ方が物足りないのか、開演直後で鳴り方が準備段階だったのか、とにかくそれほど特別感が感じられない序盤でした。

それが3楽章のガヴォットになると、変奏ごとに全く違う音色で表現されていくのです。

松本でのコンサートでは、とかく楽器の個性ばかり宣伝して演奏家に失礼ではないかと思うことがある(何十年も前のコンクール歴が前面に出ていることもある)のですが、なるほどスリーピングビューティー。その美しい艶のある音色にはうっとりし、時にゾクゾクし、そして演奏者と楽器が一体になっている。早く家に帰って自分も練習したくなってくる刺激のある生きた音楽性で溢れていて、一聴に値するコンサートであることが細胞レベルでよく分かりました。

今の私はレッスンの仕事をさせてもらえていて、その時間が欠け替えの無い有意義な時間になっています。なのでコンサートに限らず日常以外のお出掛けには、家事育児の疲れをおして家族の協力を得て子供を預けてまで出掛けるという労力が挟まり、評価基準はより一層厳しくなってしまうのですが、このコンサートは聴きに行けて素直に良かったと思えました。

そして最後に、客席の聴衆の皆さんのレベルの高さを忘れずにお伝えしたいと思います。そのマナーの素晴らしさに感謝します。
会場全体が一体となって、イザベル・ファウストの織り成す瞬間芸術を堪能したような、そんな満足感がありました。無伴奏のコンサートですから些細な音も騒音ですが、久しぶりに周りの微音やソワソワした空気を気にせず、じっくり音楽だけに感覚を刺激さることが出来ました。